春谷寺のエドヒガン

バラ科/エドヒガン

櫛田川をはさんで、県立飯南高校の川向いには、波留(はる)と呼ばれる40戸ほどの集落がある。この地にある波留遺跡からは、石器や土器が多数出土し、古くから人が住んだ所でもある。この地の山すそには、ひなびた本堂をもつ春谷寺が建つ。寺の記録は焼失しているが、寺の本尊の厨子は、飯南町内では最も古く、寺の創立は明暦2年(1656)と推定されている
さて、この古刹の前の石垣上には、三重県有数の古いエドヒガンがあり、地元では「彼岸ザクラ」 と呼んでいる。幹周囲389cm、樹高10m。古木のわりに毎年ピンク色の美しい花をつける。平成8年、当時の町指定の天然記念物になり、花の時期は、地元保存会によりライトアップされ、夜桜見物もできる。

昔、この木が落雷にあって、幹に傷が入り、そこから幹の中が腐り、空洞になった。その穴にはムササビが住んだ。一時、この木には幽霊が住むと噂されたのは、この木に住むムササビの鳴き声だったという。

最近、幹は更に腐りが進み、心配した地元では、樹木医に外科手術を依頼した。幹の空洞の腐りを取り除き、ここに発泡ウレタンを注入、さらに施肥などの治療をおこなった。また、この地を桜の名所にすべく、この木と同じエドヒガンの植栽も行っている。