東漸寺のゴヨウマツ

マツ科/ゴヨウマツ

東漸寺は約350年前の創建という古刹。寺の鐘つき堂のそばには、三重県内有数のゴヨウマツの大木があり、幹周囲319cm、樹高19m。高さ2m付近から太い2枝が出て、更に高さ4m付近から6幹に分かれる。

ゴヨウマツは庭木のなかでも、高級な木であった。古くは、清少納言の「枕草子」、吉田兼好の「徒然草」に植えたい木として「五葉」を取り上げている。この地でも当然、価値観のある木として、文化の中心地の寺に植えられたと想像される。

  東漸寺の過去帳記録によると、この地には木地師(木地屋)が多く住んだ。寛文12年(1672) から慶応2年(1866)の間に 211名を 数えた。木地師は、木材に「ろくろ」をかけて、椀や盆をつくる職人。第五十五代文徳(もんとく)天皇の第一皇子の惟喬(これたか)親王(844~897)が、木地師の元祖とされ、木地師には小倉や小椋の姓が多かった。

この東漸寺のある森地内には、苗字帯刀を許された木地師の小倉吉右衛門(襲名)が、代々居を構えて、一帯を統括。山の木をよく知る木地師達が、この地の奥山から、ゴヨウマツを採取してきて、この寺に寄進しても不思議ではない。