おりきさんの木

ナンヨウスギ科/ニューカレドニアマツ

旧志摩町役場は平成6年に新しい役場に移ったが、この旧役場下の駐車場には、幹周囲274cm、樹高20mのニュ-カレドニアマツがある。地際は新しく鉄線枠で保護された。この木は最近植えられた幼苗を除けば、 三重県内唯一のものと思う。平成元年に「新みえ名木十選」になった。別名をクックアロウカリアといい、ニューカレドニアやポリネシアに自生する。

さて、この木は明治27年、片田出身の伊東りきがアメリカから里帰りの土産にもってきたもので、 叔父で医者をしていた伊藤雲碩(うんせき)に送ったものである。

この苗木は10cmほどで、トランクの中に入れて来たという。伊東りきは慶應元年(1865)当時の片田村の漢方医伊東雲鱗(うんりん)の二女として生まれた。兄の医者の修行に同行して東京へ出るが、当時横浜に来ていたレンガ製造技師のアメリカ人家族の家に、メイドとして入り込む。

この家族は2年後に帰国するが、りきはこの家族になりすましてアメリカに渡る。

明治22年、りき24歳の時であった。明治27年(1894)、アメリカで財をなした彼女は生涯一度の里帰りをするが、この時この苗を持ってくる。 翌年の明治28年、彼女は志摩地方の移民をつれて再びアメリカへ渡る。 その後、アメリカ移民の面倒をよく見る。