薬師寺のムクロジ
ムクロジ科/ムクロジ
馬田の薬師寺の境内広場に石段を登りつめた左に県内最大と思われるムクロジがある。その幹周囲は359cm、樹高は12.5m。幹は上まで空洞で、幹も穴だらけの異様な様相の木。かつて、地上5m付近で幹は折れたと思われる。この木の近くにはカリンやイヌツゲの古い木もある。
昔、ムクロジの果実の皮は石鹸の代用に、種子は羽根つきの玉や数珠にも使われた。そのためか、この有用樹は神社、寺院、旧家に古い木を見る。木の根元に文化4年(1807) 奉納の石塔があって、この頃植えられたといわれる。そうなると、樹齢は200年近くになる。
伊賀地方にはムクロジの大木が多い。幹周囲2メートルを越える木は上野市比自岐の比自岐神社、 名張市薦原の善福寺、名張市葛尾の蔵福寺等にあったが、とてもこの薬師寺の木には及ばない。
この薬師寺は明治初年頃、廃寺となった。 今は、地区の集会所であるが、薬師さん、愛染さん、弘法さんが集めて祀られ、その祭り行事は残っている。かつて、天正9年(1581)の「天正伊賀の乱」の兵火にこの寺も遭ったが、寺の本尊薬師如来だけは、住職が山中に隠したため、無事だったという。
なお、この木の樹勢回復のため、平成18年に、樹木医が地元の上野農業高校を指導して土壌改良工事を行っている。