林渓寺のトキワレンゲ

モクレン科/トキワレン

レンゲは中国南部原産。花に芳香があって、茶、薬用あるいはかんざしに用い、東南アジアで広く栽培される。樹高3m前後の常緑低木。九州以北では温室に栽培するとある。

このトキワレンゲが奥馬野の露地で、およそ90年も越冬してきた。古くはススキ一本分のわらをつかって保護。最近はこもやビニールシートが使われる。今のこのトキワレンゲは樹高2.5m程で約10本の株立ち状。

  この木は先代の住職味岡一さんが入手した。明治28年、日本が台湾を領有した時、小隊長として台北に駐屯した。あるとき日本軍の幹部達が、台湾の大地主の家に招待されたとき、彼はその屋敷に咲き誇り、芳香あふれたトキワレンゲに接したとき、この木にとりつかれたたという。その後、日露戦争で転戦するため、一時日本に帰ることになる。小さなトキワレンゲの苗を、軍用行李 に忍ばせた。軍用行李ではフリ-パスで持ちこめた。この苗は林渓寺の庭園の中央に植えられた。この寺ではこの木を「玉蘭(ギョクラン)」と呼ばれてきたが、恐らく台湾で教えられた名だったと思われる。この木に愛情を注ぎ、守り続けた先代住職は、昭和25年に亡くなる。亡くなる時、息子の現住職に「この木を大切にせよ」と言い残した。