龍性院のコウヨウザン
スギ科/コウヨウザン
伊賀地方南部にはコウヨウザンが多く植えられている。真言宗豊山派の寺には特に太い木があるが、本山の長谷寺にはこの木はないので、単に佛教伝来にちなむ中国産の木として植えられているのかもしれない。龍性院のコウヨウザンは本堂前で、境内の塀の中側にあり、幹周囲438cm、樹高30.5mで、コウヨウザンの伊賀地方最大の木。かつて、樹高5m付近で幹がおれ、そこから萌芽して多幹になっている。なぜかこの木は球果を多く着ける。この木には、いつもしめ縄が付いている。
『なばりの昔話』の中に、「昔な、村を治めている庄屋や由緒ある家には、世にも珍しい木があったそうやわ。その木はな、こうようざんと言うてな、ここらの伊賀には、十本しかないんやわ。滝之原にも、その木があるんやけども、家の高さを超えたらげんが悪いといって切るんやわ。
寺(龍性院)にあるその木は、お堂をとっくに越えて、空に高く伸びているんやけど、住職さんが高さなんか気にしないのを知ってか、今も伸び続けているんやわ。」と語られるが、この寺の近くの庄屋屋敷にも、古いコウヨウザンがあった。この寺の木はこの地区の庄屋さんが寄進したのかもしれない。