正月堂のテーダマツ

マツ科/テーダマツ

この寺は、古くは東大寺伊賀荘園の地。農業予祝神事「修正会」が、奈良東大寺十二大会の一環の一つとして、旧正月に行われるので、正月堂と呼ばれるが、正しくは観菩提寺。本尊は33年目ごとに開帳される秘仏十一面観世音。この立像をはじめ多くの文化財がある。

寺の歴史は古く、開祖は天武天皇の皇女で、斎王を勤めた多紀皇女(たきのひめみこ)。父帝と生母の穀媛妃(かじひめのいらつめ)の菩提を弔って建てたといわれる。この時は神亀2年(725)で、観音寺といった。天平勝宝4年(752)、東大寺の渡来僧の実忠和尚がこの地に観音堂を建立し、上記の本尊を安置している。

戦後は、復興に向けて木材需要が逼迫するなか、国では木材増産の政策が多くとられた。なかでも、早く大きくなる早生樹に脚光をあびた。その樹種にアメリカ産のテーダマツがあった。旧島ヶ原村の村有林の造林でもテーダマツが一部採用された。この生長のよい、三葉松の珍しい苗は、まず地元の正月堂境内にも1本寄贈され、鐘つき堂近くに植えられた。昭和33年頃であった。

今、この木は幹周囲313cm、樹高21.5mで、県内最大の木。テーダマツは生長がよすぎて、幹が傾いたり、幹が折れたりする欠点があるが、しかし、マツクイムシには強い性質もある。