誓願寺のイブキ

ヒノキ科/イブキ

三岐鉄道三岐線の終点の藤原駅の下には誓願(せいがん)寺がある。この寺の庫裏裏側で、書院の庭には幹周囲362cm、樹高18.5mの太いイブキがある。幹は左巻き(旧表示では右巻き)にねじれ、枝には雌花を多く着ける。

平成5年刊の全国育樹祭記念誌『郷土の樹木』では、武田明正先生はこの木を見て「根元にたってみると、天空に向かってねじれ込んでいく巨大なドリルの刃先を連想させる」と書いている。

歴代の住職は、客を書院に通し、このイブキを眺めながらもてなしたといわれる。さらに、寺の表側山門の南側にも幹周囲220cmの古いイブキもある。イブキの庭木は、県内では稀にあり、旧家や古刹に古い木が残っている。

この書院の庭にはコバノミツバツツジやイロハモミジがある。この三岐鉄道は昭和6年に営業を開始したが、このときの鉄道唱歌に「もみじの誓願寺、さくらの正法寺」と歌われたが、当時、この誓願寺にはモミジの古木があったという。本堂前広場にはツゲの植栽があるが、近くの石灰岩地帯産のものを移植したものであろう。