前村の大楠

クスノキ科/クスノキ

幹周囲811cm、樹高29.5mの「前村の大楠」の北側下には、かつての熊野街道が通り、道をはさんで大楠組集会所があり、南側にはJR紀勢本線が通る。この大楠にはしめ縄があり、地際付近の空洞は治療された痕がある。下には祠が祭られる。この大楠に隣接して、太い幹周囲360cmのカゴノキが生育する。このカゴノキは地際は大きな空洞になり、その中には掃除道具一式が収納されている。

かつての南北朝時代、この地は北畠氏と南朝派の隠れ里だった。一族はこの地で王朝の復興を願った。帰農した遺臣たちは、この地にクスノキを記念に植えたが、これは忠臣・楠木正成の名にちなんだものだった。

その後、ここの里人はこの遺蹟を後世に伝えるため、クスノキを神木として仰ぎ、木の下に祠をつくり祭った。このクスノキは熊野街道の熊野詣や参宮客の名物にもなった。

江戸時代から明治時代中期にかけて、このクスノキの近くには、楠本屋と大楠屋という旅篭もあった。昭和54年には、この町内一の巨木がきっかけになり、「町の木」はクスノキになった。また、このクスノキは「大楠」として、平成元年、多気町指定天然記念物になった。