大淵寺のスダジイ

ブナ科/スダジイ

宮川ダムの少し下流で、宮川流域の最も奥の集落の寺は大淵寺で、しかも斜面にある集落の最上部に寺はある。この大淵寺は、昔は下を流れる宮川の川縁にあった。ここには大きな淵があったので、寺の名の起こりとなった。

この地で、水害と火災に遭って、高い山腹に移転したが、今度は台風時に大木が倒れて、本堂を壊し、再び移転した。現在の地に落ち着いたのは、享保4年(1719)であった。この地も大木が多かった。その中で、形の良いシイノキが一本墓地に残された。この木はいま、幹周囲690cm、樹高20.5mのスダジイで、寺の西側の墓地脇にある。県内最大のスダジイと思われる。

 シイノキにはツブラジイとスダジイがある。ツブラジイのドングリは長さ1cm前後で球形に近く、スダジイのドングリは長さ1.5cm前後で細長い。内陸のシイノキはツブラジイとされるが、調べてみてもほとんどツブラジイである。ところが天然記念物になるようなシイノキはすべてスダジイである。巨木のドングリは、同じ木でも年により長さが違うのを観察したので、私は豊作年にはツブラジイ型ドングリ、凶作年にはスダジイ型ドングリが成るように思う。