宗英寺のイチョウ
イチョウ科/イチョウ
宗英寺山門横のイチョウは昭和12年(1937)に県指定天然記念物。県内最大のイチョウで、幹周囲805cm、樹高23mの雌株。このイチョウ(公孫樹)は古いだけあって、亀山城主 板倉勝澄の一代記の大塚雅春著『五重の塔』の“公孫樹の賦(ふ)”に登場する。
「新十郎(勝澄)は享保8年(1723)10月、8歳のときに、母於蓮(おれん)の方に死に別れをした。傷心の新十郎は、亀山城西之丸の石垣にかがみ込んで、城下に広がる家々に屋根を眺める。どの家からも、夕餉(ゆうげ)の支度をする、かまどの煙がのぼり、幸せな一家団欒(だんらん)の様子がうかがえた。西南の方角をぼんやりと眺めていると、宗英寺境内のイチョウの黄葉が、風にのってひらひらと乱舞しながら、まるで紅ひわの群れのように飛んでいくのを見て、目を見張った。」とある。
このイチョウから亀山城まで、1km。今から280年前の享保8年頃でも、遠くからも望むことができる大樹であった。また、この寺の奥様・久野陽子さんは児童文学作家。このイチョウは久野さんの創作童話『六平ちゃんと いちょうの木』の話にも登場する。