家建の茶屋跡にオオシマザクラ

バラ科/オオシマザクラ

旧磯部から宇治へ越える旧道は「逢坂越え」。この旧道の「天の岩戸」の手前で、山道に入る所に、明治末期まで「家建(やたて)茶屋」というがあった。昔、志摩から伊勢に向かう旅人が休息した所である。

この跡地には古いオオシマザクラがあり、平成11年に当時の磯部町の天然記念物になっている。その大きさは地際から株立ち状になって、地際周囲304cm、樹高10.5m、枝張り22m。近くの「天の岩戸」は神宮林の近くにあって、天照大御神が隠れ住まわれたという伝説の場所。この水穴から湧き出る岩清水は「日本の名水100選」に選ばれている。

このオオシマザクラの満開になる4月上旬には花見の会が開かれ、この名水を使って野点(のだて)や、地元名物の「さわ餅」が振舞われる。

 オオシマザクラの花は白く大きいが、葉も同時に開く。この木の本来の分布は伊豆半島や房総半島であるので、この「家建の茶屋跡のオオシマザクラ」は他から入手して植栽された木と思われる。場所が茶屋であるので、葉は桜餅を包む目的に植えたかもしれない。オオシマザクラの葉は、江戸の向島の長命寺で、桜餅として享保2年(1717)、最初に売り出している。