射山神社のイチイガシ
ブナ科/イチイガシ
射山神社の森には4本の古いイチイガシがある。うち一本はしめ縄を付けた神木で、「宮の湯」の由緒書の裏側の境内林にある。その幹周囲は358cm、樹高は22m。幹の先は折れたと思われる痕がある。イチイガシは縄文、弥生時代には伊勢平野には最も栄えた木とされるが、今、旧久居市では、当神社と七栗神社の2ヵ所にしかない貴重な木である。暖地のイチイガシのある林では、必ず地表に、最小の樹木ツルコウジがみられる。この神社でもツルコウジが見られる。
平安時代の王朝文学の才媛・清少納言は『枕草子』の一部の写本に「湯は、ななくりの湯。有馬の湯。玉造の湯。」と書いた。平安時代、宮中で話題にになった温泉であった。この「ななくりの湯」は榊原温泉のことで、室町時代までは七栗と呼ばれていた。
榊原温泉にある射山神社の射山は湯山のなまりと云われる。かつて境内には「宮の湯」と呼ばれた「湯所(湯元)」があった。今、神社前の手洗い場には「長命水」と云われる湧水がある。ここはかつて「榊の井」と呼ばれ、この付近に多くあったサカキは、この「長命水」に浸した後、伊勢の神宮に献上された。古代に栄えたイチイガシがある神社にふさわしく、この神社では温泉を使った湯立神事が古式ゆかしく行われる。