成願寺のネズ

ヒノキ科/ネズ

成願寺境内の塀の外側で、本堂裏側の出入り口下には古いネズがある。その大きさは幹周囲109cm、樹高6で、幹の多くの部分に腐りが入る。この木の下には3体の地蔵が祀られる。このネズと地蔵の前は広場になっているが、ここは祇園さんの行事の行われるところ。

 ネズはスギの葉に似ているが、手で持てないほど葉の先が尖っている。そのため、昔はこの葉をネズミの通路に置いて侵入を防いだ。このことから別名ネズミサシという。ネズは伊賀地方の里山には多いが、伊勢地方ではあまり見ない。従って伊勢地方での植栽は、神社仏閣や旧家の庭にのみ稀に見られるに過ぎない。この寺に、古い時代に何故植えられたかは判らないが、近くの南出・白山比咩(しらやまひめ)神社本殿前側にも古いネズがあるので、この地区共通の価値観のある木であることは間違いない。

なお成願寺は、明応3年(1494)に伊勢国司北畠材親の部将で小倭郷上ノ村の城主・新長門守が真盛上人に帰依、出家して真九法師と称し、戦乱によって失った長男と次男をはじめ一族の菩提を弔うために建立を発願し、城近くに開創したものである。