果号寺のシブナシガヤ
イチイ科/カヤ
果号寺裏側の石垣の上にはシブナシガヤがあり、50cm上の幹周囲が370cm、樹高11m。地上90cm付近で3幹立ちになり、そのうち最大の幹周囲は281cm。この果実の大きさは、春に拾った10個の果実の平均長さは30.7mmあり、ヒダリマキガヤのように果実は大きい。したがって、果実の油を絞る目的等で栽培していたものと思う。
近くの西高倉の高倉神社にもシブナシガヤがあり、ともに昭和7年7月25日に国指定の天然記念物になっている。なお、果号寺本堂西の墓地には幹周囲323cmの太いヤマザクラがある。
カヤの果実の食用になるところを胚乳といい、その外側に渋皮がある。シブナシガヤは渋皮が薄く、外側の殻に渋皮がくっ付く状態の品種。林弥栄博士はその著書『有用樹木図説林木編』(S44)で岐阜県上石津村(当時)下山の唯願寺、同村宮街道高木貞勝所有林内、三重県上野市西山の果号寺、同市西高倉の高倉神社の木をあげている。
また、嘉永2年(1849)に刊行された当時の代表的な博物学書である小野蘭山の『本草綱目啓蒙』にも記載されており、伊賀地方にこの珍しい特徴を持ったカヤがあることは、江戸時代にはすでに知られていたようである。