芳ヶ崎のクロガネモチ

モチノキ科/クロガネモチ

桑名市の天然記念物「芳ヶ崎のクロガネモチ」は、天王八幡社の神木。神社から、かなり離れて前方に一本だけ生育し、幹周囲344cm、樹高15m。枝が横に伸び、枝張りは24mもあって、この木は傘を広げたような形になっているが、高さより枝の広がりの方が長い。幹にはノキシノブが多く着く。昔から、この木を少しでも切ると祟りがあるといわれた。近くに建ったアパートは、この木の枝の先まで、避けて建った。送電用電線も迂回。かつて、この木の下を通る道の道路工事や、水道工事にかかる入札業者が無かったことがあったと、市役所の人から聞いた。

一方、クロガネモチは庭木として金持ちを連想するという縁起から、古くから旧家によく植えられた木である。この木も地元の名物であった。近くのアパート名は「くろがねハイツ」、自冶会の集まりは「くろがね会」と名付けられ、以前にこの木の近くにあった酒造会社の酒の銘柄も「くろがね正宗」であった。

 地名「芳ヶ崎」は「はがさき」と読むが、江戸時代は同じ読み方で「芳賀崎」と書いた。明治22年に発足した七和村の役場のあった所。この神木のクロガネモチのある神社は村社であり、古くから信仰された木であった。なお、古い村名の「七和」は、小学校名や三岐鉄道の駅名等にその名が残る。