長太の大クス

クスノキ科/クスノキ

「長太(なご)の大クス」は昭和38年三重県指定天然記念物。平成元年には「新みえ名木十選」にも選ばれた。今、その大きさは幹周囲932cm、樹高28m。古い昔、ここに延喜式内社の大木神社があった。今、この巨木は水田の中の平野に、一本だけそびえ立つ。この様を見た巨樹の写真を撮り続けた写真家八木下弘は「私が多年求めていた、遮蔽物のない、全景を撮影できる数少ない巨樹の一本であった」と『林業技術№534』に書いている。

また、八木下弘写真集『日本の巨樹』(昭和54年、中央公論社)では本のケースのそのカバーにこの木を「一の宮の大クス」として写真を載せ、その本文では「収穫直前の黄金に輝く田圃の真ん中一本すっくと立っているではないか。このような状態の巨木はまことに少ない。これからは四季折々にこの巨木に通いつめることになるだろう。」と述べている。

わが国の太い木のほとんどはクスノキ。台風に逢うと、枝を落として強風に耐え、決して倒れることはない。この「長太の大クス」は台風に遇うと強風を受けやすい。皆が心配するほど枝葉が少なくなるが、いつも数年で回復する。